平成29年度介護保険の一部改正

地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律のポイント
※ 平成30年4月1日施行。
高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止、地域共生社会の実現を図るとともに、制度の持続可能性を確保することに配慮し、サービスを必要とする方に必要なサービスが提供されるようにする。
1.保険者機能の強化等による自立支援・重度化防止に向けた取組の推進
要介護認定率の推移
先進的な取組を行っている
○ 高齢化が進展する中で、地域包括ケアシステムを推進するとともに、制度の持続可能性を維持するためには、保険者が地域の課題を分析して、高齢者がその有する能力に応じた自立した生活を送っていただくための取組を進めることが必要。
○ 全市町村が保険者機能を発揮して、自立支援・重度化防止に取り組むよう、
① データに基づく課題分析と対応(取組内容・目標の介護保険事業(支援)計画への記載)
② 適切な指標による実績評価
③ インセンティブの付与
を法律により制度化。
※主な法律事項
・介護保険事業(支援)計画の策定に当たり、国から提供されたデータの分析の実施
・介護保険事業(支援)計画に介護予防・重度化防止等の取組内容及び目標を記載
・都道府県による市町村支援の規定の整備
・介護保険事業(支援)計画に位置付けられた目標の達成状況についての公表及び報告
・財政的インセンティブの付与の規定の整備
~ 保険者機能の抜本強化 ~
2.新たな介護保険施設の創設
○今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズへの対応のため、「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナル」等の機能と、「生活施設」としての機能を兼ね備えた、新たな介護保険施設を創設する。
○病院又は診療所から新施設に転換した場合には、転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できることとする。
<新たな介護保険施設の概要>
見直し内容
名称
介護医療院
※ただし、病院又は診療所から新施設に転換した場合には、転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できることとする。
機能
要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する。(介護保険法上の介護保険施設だが、医療法上は医療提供施設として法的に位置づける。)
開設主体
地方公共団体、医療法人、社会福祉法人などの非営利法人等
※ 具体的な介護報酬、基準、転換支援策については、介護給付費分科会等で検討。
☆ 現行の介護療養病床の経過措置期間については、6年間延長することとし、平成35年度末までとする。
障害福祉サービス事業所等
介護保険事業所
3.地域共生社会の実現に向けた取組の推進
新たに共生型サービスを位置づけ
○ 高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、 介護保険と障害福祉両方の制度に 新たに共生型サービスを位置付ける。(指定基準等は、平成30年度介護報酬改定及び障害福祉サービス等報酬改定時に検討)
「我が事・丸ごと」の地域作り・包括的な支援体制の整備
1.「我が事・丸ごと」の地域福祉推進の理念を規定
地域福祉の推進の理念として、支援を必要とする住民(世帯)が抱える多様で複合的な地域生活課題について、住民や福祉関係者による①把握及び②関係機関との連携等による解決 が図られることを目指す旨を明記。
2.この理念を実現するため、市町村が以下の包括的な支援体制づくりに努める旨を規定
○ 地域住民の地域福祉活動への参加を促進するための環境整備
○ 住民に身近な圏域において、分野を超えて地域生活課題について総合的に相談に応じ、関係機関と連絡調整等を行う体制(*)
○ 主に市町村圏域において、生活困窮者自立相談支援機関等の関係機関が協働して、複合化した地域生活課題を解決するための体制
3.地域福祉計画の充実
○ 市町村が地域福祉計画を策定するよう努めるとともに、福祉の各分野における共通事項を定め、上位計画として
位置づける。(都道府県が策定する地域福祉支援計画についても同様。)
(*)例えば、地区社協、市区町村社協の地区担当、地域包括支援センター、相談支援事業所、地域子育て支援拠点、利用者支援事業、社会福祉法人、NPO法人等
※法律の公布後3年を目途として、2の体制を全国的に整備するための方策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる旨の附則を置く。
4.現役世代並みの所得のある者の利用者負担割合の見直し
世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を 3割とする。ただし、月額44,400円の負担の上限あり。【平成30年8月施行】
見直し内容
負担割合
年金収入等 340万円以上※1
2割 ⇒ 3割
年金収入等 280万円以上※2
2割
年金収入等 280万円未満
1割
※1 具体的な基準は政令事項。現時点では、「合計所得金額(給与収入や事業収入等から給与所得控除や必要経費を控除した額) 220万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額340万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合463万円以上)」とすることを想定。⇒単身で年金収入のみの場合344万円以上に相当
※2 「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額280万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合346万円以上)」⇒単身で年金収入のみの場合280万円以上に相当